山形鉄道長井フラワー線各駅停車(ver3) 

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山形鉄道
山形鉄道フラワー長井線(今泉駅にて)

 山形鉄道フラワー長井線は、奥羽本線の赤湯駅から荒砥駅までを結ぶ全長約30kmの鉄道です。以前は国鉄長井線でしたが、御多分に洩れず1988年に民営化されました。始発駅の赤湯駅は、山形新幹線も止まる大きな駅です。また沿線は見所満載で、ほとんどの駅に徒歩圏内のお薦めスポットがあります。花の名所も多く、「フラワー長井線」という愛称で親しまれています。途中駅の今泉駅はJRの米坂線とも連絡しており、米坂線のアクセスの悪さ(ほぼ2hrに1本)のために、長井鉄道を使って今泉駅まで行くこともあります。どこか時刻表トリックに使えそうなネタです。

 またJR東日本が発売している週末切符では、JR以外でも自由に乗降できる民営鉄道の1つということもあり、鉄道旅を愛する私にとって、ほぼパーフェクトな路線です(週末切符については、別項でご紹介していますので、ご参照頂ければと思います)。ここではフラワー長井線の魅力をお伝えするために、実際に訪れた中から各駅につきお勧め箇所を1点厳選してご紹介させて頂きたいと思います。今回はその3回目です。これまでにご紹介しきれなかった駅周辺をご紹介させて頂きたいと思います。もちろんすべて駅から徒歩圏内です。是非、皆さんも山形に足を運んで頂き、この愛すべきフラワー長井線に乗ってみませんか。

 


山形鉄道赤湯駅(2023年撮影)
山形鉄道赤湯駅(2023年撮影)

【赤湯駅】結城豊太郎記念館 ※一部更新

 

 赤湯駅はフラワ長井線の始発駅であると同時に、山形新幹線も止まる大きな駅です。写真をご覧頂ければと思いますが、JR側の赤湯駅は山形新幹線開業と同時に新しくなりましたが、山形鉄道側の駅舎はいかにも昔の駅らしい年季を感じさせるたたずまいです。

 周辺は、赤湯温泉、赤湯ラーメンなど見所、食べ処満載ですが、ここでは是非「結城豊太郎記念館」をお勧めしたいと思います。

 結城豊太郎は、地元南陽市出身の元大蔵大臣であり、日銀総裁も歴任しました。大変な読書家としても知られていて、財政や金融関係の書物はもちろん、文学や歴史書なども多く愛読されていたとのことです。結城豊太郎記念館には、氏から贈呈された蔵書や所蔵品が数多く展示されており、日本の近代史を学ぶだけではなく、文化・社会全般を広く知ることができます。赤湯駅から徒歩10分です。

 なお赤湯駅からの徒歩圏内には白竜湖があり、ここの失われゆく自然について別ページで触れています。合わせてご覧いただければと思います。

JR赤湯駅
JR赤湯駅(2023年撮影)
結城豊太郎記念館
結城豊太郎記念館(1999年撮影)


南陽市役所駅(2023年撮影)
南陽市役所駅(2023年撮影)

【南陽市役所駅】シェルター南陽市文化会館

 

 南陽市役所駅は、文字通り市役所のための駅と思いつつ現地を訪れましたが、実際、写真をご覧頂ければおわかりの通り、駅前は市役所以外、何もなく非常に殺風景としたものでした。それでも何かないものかと思い駅周辺を散策していたところ、なんと駅前に発見しました。それは「シェルター南陽市文化会館」というものです。一見、どこの街にもある文化会館なので見落としていましたが、日本初となる大型木材耐火施設が「最大の木造コンサートホール」として、なんとギネス世界記録に認定されたのです。東日本大震災でそれまでの施設が被災したため、新しく建て直されたようです。木造の設備がどのようにして耐火構造になっているのかについて解説されていましたが、正直、あまり理解できませんでした。ただ大黒摩季を始めとして、このホールでコンサートをしたミュージシャンの多くが、このホールの素晴らしさを絶賛する色紙が展示されていました。駅から徒歩1分です。

 それにしても「シェルター」という言葉が気になります。市民文化会館という公共の施設なので、何か有事が発生した時の市民の避難場所を兼ねているのでしょうか。思い切って受付の女性に聞いてみました。なんとシェルターという会社がこの施設の設計を担当したところから名づけられたようです。変なことを聞いてしまい、大変に恥ずかしい思いをしてしまいました。

シェルター南陽市文化会館
シェルター南陽市文化会館
シェルター南陽市文化会館(ギネス認定書)
シェルター南陽市文化会館(ギネス認定書)


【宮内駅】熊野神社 ※一部更新

 

 宮内駅から徒歩10分のところに縁結びの神様として有名な熊野神社があります。この熊野神社の本殿の裏には、うさぎが3匹隠し彫りされており、3匹見つけた人は恋や願い事がかなうとされています。これを見つけようと何時も本殿裏は賑わっているようで、実際、私が訪れた時も多くの人がうさぎを探していました。私も見つけようとしましたが、2匹までは容易に見つかったものの、最後の1匹をどうしても見つけることが出来ませんでした。列車の発車時刻が迫っていたため、よほど周りの人に聞いてみようと思いましたが、次回の楽しみとするため断念しました。あとで書物を読んだところ、やはり最後の1匹はなかなか見つけることが困難で、これを人から聞いたり人に教えてしまうとご利益がなくなるとのことです。よくぞ人に聞かなかったものです。

 ちなみにかつて宮内駅には、うさぎの駅長「もっちい」がいましたが、2023年6月に息を引き取ったとのことです。

宮内駅
宮内駅
熊野神社
熊野神社


おりはた駅
おりはた駅

【おりはた駅】夕鶴の里語り部の館と珍蔵寺 

 

 おりはた駅には、駅から徒歩5分のところに民話「鶴の恩返し」を開山縁起としている珍蔵寺と、「鶴の恩返し」を始めとする民話を伝承する目的で作られた「夕鶴の里語り部の館」があります。そもそもこの辺りは「鶴の恩返し」の民話の発祥地なのでしょうか。鶴巻田や羽付けといった地名があり、非常に興味があるところです。「夕鶴の里語り部の館」では鶴の恩返しのスライドや製糸に関する展示などを見ることができます。また資料館の名前にもなっているように、語り部によるお話があり、どこか岩手県の遠野に似た民話の里という雰囲気を味わうことができます。

 近くには鶴の恩返しに出てくる正直者の金蔵が、鶴になった女房を偲んで建てたと言われている珍蔵寺があります。

夕鶴の里語り部の館
夕鶴の里語り部の館
珍蔵寺
珍蔵寺


南陽市役所駅(2023年撮影)
南陽市役所駅(2023年撮影)

【西大塚駅】有形文化財の駅舎と松川橋梁※一部更新

 

 西大塚駅の駅舎は、構えが大変に重厚で同じフラワー長井線の「羽前成田駅」とともに、国の登録有形文化財に指定されています。写真をご覧頂ければおわかりの通り、なんと凛とした美しく重厚なたたずまいでしょうか!かつては日本のどこにもあった木造の駅舎ですが、現役で残っている木造の駅舎は数少ないようです。いつまでも残してほしい日本の原風景です。

 周辺の見所としては、駅から徒歩15分のところにある松川橋梁が有名です。この松川橋梁は山形県の母なる川でもある最上川の支流の1つである松川にかかる橋で、赤と緑の見事なコントラストが印象的な橋でした。

松川橋梁
松川橋梁
松川橋梁
松川橋梁


今泉駅
今泉駅

【今泉駅】八ケ森自然公園※今回追加

 

 山形鉄道の今泉駅は長井フラワー線の駅であると同時に、JR東日本の米坂線の駅でもあります。右の写真の通りJR東日本の駅舎しか見つけることが出来ませんでしたが、実際は両社の駅舎となっていました。米坂線のダイヤがほぼ2時間に1本の割合に対して、長井フラワー線はほぼ1時間に1本なので、一見、長井フラワ線の方が便利に見えますが、少なくとも上りの列車に関しては米坂線の方が丁度よい時間帯に走行されている場合があります。そのため長井駅から山形新幹線で戻る際も、赤湯経由ではなくなく、今泉駅にて米坂線に乗り換えて米沢まで向かうことが多いです。

 さて今泉駅から徒歩16分のところに八ケ森自然公園があります。ここは名前の通り人工的な遊具等がほとんど無い、自然を十分に満喫できる公園です。訪れる人も少なく、静かな時間を過ごすことができます。

 ちなみに八ケ森の名前の由来は、平安時代に勃発した前九年の役に端を発しています。ご存知の通り前九年の役とは、朝廷側の源頼義・義家が当時東北地方を支配していた有力豪族の安倍頼時・貞任ら一族を征伐した戦いとされています。源義家(八幡太郎義家)の合戦に関する伝説があることにちなみ、「八ケ森」と呼ばれているようです。

八ケ森自然公園
八ケ森自然公園
八ケ森自然公園
八ケ森自然公園


南長井駅(2023年撮影)
南長井駅(2023年撮影)

【南長井駅】白山神社※一部更新

 

 白山神社は、長井時広の家臣であった大須賀長光が加賀白山神社の分霊を勧進したのが始まりとされています。建立が鎌倉時代と言われており、大変に由緒ある神社です。境内に立つだけでどこか厳かな雰囲気を感じます。

 現在の社殿は米沢藩主上杉定勝により改築されたもので、社標は江戸時代の国学者として有名な平田篤胤により書かれたものとされています。社務所には写真の通り、大変に大きな獅子頭が設置されています。また境内には樹齢700年と言われている大ケヤキの木があり、昭和48年に天然記念物に指定されました。このように大変に見所満載の神社です。南長井駅から徒歩6分です。

 ただ1点残念であったのは、いろいろお聞きしたいことがあり、社務所を訪ねたのですが誰もいませんでした。お隣にある長遠寺の方に聞いてみたところ、私が訪れた時がたまたま誰もいなかったわけではなく、何時も不在のようです。HPにある電話も使われていない番号でした。

白山神社
白山神社
白山神社
白山神社(獅子頭)


新しい長井駅(2023年撮影)
新しい長井駅+市役所(2023年撮影)
かつての長井駅(2017年撮影)
かつての長井駅(2017年撮影)
白山神社
新しい長井駅(2023年撮影)※定点より撮影


あやめ公園駅
あやめ公園駅

【あやめ公園駅】あやめ公園※一部更新

 

 あやめ公園駅は文字通り「あやめ公園」の最寄り駅です。このあやめ公園が開園されたのが1910年ですから110年以上も昔に出来た由緒ある公園です。日本有数のあやめ公園であることで知られており、まさに「山形鉄道」の愛称でもある「長井フラワー線」のシンボル的な駅です。毎年6月中旬から7月上旬にかけて、あやめが見頃を迎え、丁度この時期に「あやめ祭り」が開催されます。

 全国的に貴重な品種である「長井古種」と呼ばれるこの公園でしか見られない品種が存在しており、市の天然記念物に指定されています。あやめ公園駅から徒歩5分の距離にあります。

 なおあやめ公園駅の近くにはライダーの聖地として知られる総宮神社があります。総宮神社については別項で紹介させて頂いているので合わせてご覧頂ければ幸いです。

あやめ公園祭り
あやめ公園祭り
あやめ公園祭り
あやめ公園祭り


羽前成田駅(2019年撮影)
羽前成田駅(2019年撮影)

【羽前成田駅】有形文化財の駅舎と萩乃湯※一部更新

 

 羽前成田駅の駅舎は構えが大変に重厚で、同じフラワー長井線の「西大塚駅」とともに登録有形文化財に指定されています。周辺の見所としては「卯の花温泉萩乃湯」が駅から徒歩20分のところにあります。ここの辛みそラーメンは大変に有名で確かに絶品の味でした。

 余談ではありますが、羽前成田駅からMAPアプリを頼りに卯の花温泉萩乃湯にアプローチしたのですが、ほとんど民家の裏としか思えないようなルートを案内されてしまい、想定以上に時間を要してしまいました。以前は目的地までは地図を頼りに歩いたものですが、今はMAPのアプリさえあればほぼ全国どこでも案内してくれます。本当に便利な時代になりました。ただ時々、MAPアプリはとんでもない経路を案内してくれるようで、今回がまさにそうでした。これについては別のページでも触れていますのでご参照頂ければ幸いです。

 なおこの卯の花温泉萩乃湯の敷地内には、温泉の名前が示す通り、卯の花姫伝説に関連した化粧観音堂があります。これについても別ページで紹介させて頂いていますので、合わせてご参照いただければと思います。

卯の花温泉萩乃湯
卯の花温泉萩乃湯
化粧観音堂
化粧観音堂


【白兎駅】取り付く島のない駅と木彫りの白兎 ※今回追加

 

 白兎駅とお隣の蚕桑駅は、長井フラワー線の中でも屈指の見所が少ない駅です(笑)。丁度、両駅の中間あたり(正確に言えば白兎駅から徒歩15分、蚕桑駅から徒歩21分)に葉山神社があり、そこの狛兎が有名なため、どちらの駅を最寄り駅にするか少し考えました。本当は白兎駅の方が徒歩時間が短いのですが、そうなると蚕桑駅のお薦めどころがなくなってしまいます(笑)。そこで葉山神社は蚕桑駅の最寄り駅として譲り、この白兎駅周辺の見所は駅構内にポツンとある白兎の木彫りとさせてもらいました。

 それにしても写真をご覧頂ければおわかりの通り、白兎駅は秘境駅ではないのですが、取り付く島もないほど周辺は田畑に囲まれたところでした。

白兎駅
白兎駅(2019年撮影)
木彫りの(白?)兎
木彫りの(白?)兎


蚕桑駅(2023年撮影)
蚕桑駅(2023年撮影)

【蚕桑駅】葉山神社の狛兎※今回追加

 

 蚕桑と書いて「くわこ」と呼びます。時々クイズ番組で難読駅名でもでてきます。この蚕桑駅とお隣の白兎駅は、(大変に失礼ながら)長井フラワー線の中でも屈指の見所が少ない駅です。丁度、両駅の中間あたり(正確に言えば白兎駅から徒歩15分、蚕桑駅から徒歩21分)に狛兎が有名な葉山神社があります。本来なら白兎駅が最寄り駅なのですが、そうすると蚕桑駅のお薦めどころがなくなってしまうので、白兎駅から譲ってもらいました(笑)

 この葉山神社は今から約1000年前に勃発した前九年の役により、辺り一帯荒れ放題になっていたところを、恵法律師という修験者がこの近辺に薬師如来を発見したことが由来になっているようです。明治5年に葉山神社になりました。農業の神様として信仰されています。

 ここ葉山神社が大変にユニークなのは、狛犬ならぬ狛兎が迎えてくれるということです。

 そういえばこのあたりは兎にちなんだ名前が多いようです。前にご紹介した「白兎駅」という駅名もそうですし、宮内駅を最寄り駅とする熊野神社の兎の木彫りといい、どうも長井フラワー線には兎に纏わる名前が多いようです。少し調べてみましたが、恵法律師が薬師如来を発見してお社を建てた際に、兎が案内したと言われていることに由来しているようです。

 なお長井フラワー線は、ここ蚕桑駅から終着駅の荒砥駅までは山形県白鷹町に入っていきます。

葉山神社
葉山神社(2023年撮影)
葉山神社の狛兎
葉山神社の狛犬ならぬ狛兎(2023年撮影)


【鮎貝駅】鮎貝神社 ※今回追加

 

 鮎貝駅から徒歩10分のところに鮎貝神社があります。鮎貝神社は1059年に源義家により創建されたと伝えられている由緒ある神社です。江戸時代には米沢藩主上杉家の崇敬を受け、このあたり一帯の総鎮守と定められました。現在の本殿は1843年に再建されたもので、県の有形文化財にも認定されています。

 境内にはかつて鮎貝城の本丸がありました。この鮎貝城は、1396年に藤原成宗が移り住み城を築いたとされています。その後、藤原氏は鮎貝氏を称しましたが、後に鮎貝氏は伊達氏の家臣となりました。ただ1587年に当時の当主であった鮎貝宗信が山形藩の初代藩主でもあった最上義光に内通したとされ、伊達正宗により落城となってしまいました。その後は米沢藩上杉氏の支城となりました。

 写真をご覧頂ければおわかりの通り、通りから少し細い道を入ったところにあるので、見逃してしまう可能性があります。

鮎貝駅(2019年撮影)
鮎貝駅(2019年撮影)
鮎貝神社(2019年撮影)
鮎貝神社(2019年撮影)


【荒砥駅】荒砥鉄橋

 

 荒砥駅周辺には、鉄道ファンであれば誰もが知っているスポットがあります。それは荒砥駅から徒歩約7分のところにある最上川に架けられた荒砥鉄橋で、最古の鉄道橋梁として土木遺産にも選定されています。

 元々は明治20年に旧東海道線の木曽川に架設されたものです。当時の日本の鉄道技術では建造することが出来なかったため、英国から輸入されたようです。その後、鉄道の進化に伴い、鉄道の重量が増え、橋梁が強度不足となったため旧国鉄長井線に移設されました。都会で重荷に耐えられないために移設されたというのは、少し複雑な思いではありますが、是非、撮影をかねて訪れて頂くことをお薦めします。特に桜の季節には絶好の撮影スポットとなるようです。 

荒砥駅
荒砥駅
荒砥鉄橋
荒砥鉄橋


<参考情報>