地図からMAPへ 

<カテゴリ:歩き>


 私が東北地方に通い始めてまもなく40年になります。この間、旅のスタイルが大きく変わりました。このカテゴリでは「変わりゆく風景」と称して、そのスタイルの変化をbefore-afterの形で思い起こしています。今回は旅の手段の中から「歩き」に焦点を当てて、その変化について触れたいと思います。

最寄りの桑折駅からスタート!
最寄りの桑折駅からスタート!

 「歩き」こそ私の旅の原点とも言える武器です。とにかく最寄りの駅、バス停から目的地までは車を使わずに歩くようにしています。何故歩くのかについてあまり考えたことはありません。折角、一番近くまで公共の交通手段を使って来たのだから、あとは現地の空気とか地元の方に接しながら歩くしかないと思って歩きます。また歩くことにより、その街の大方の輪郭と方向感覚(いわゆる「俯瞰図」)が頭の中に入るという効果があります。もし次に来た時には大体の街の全体図がわかるようになります。

 歩きの際に大事なのが地図です。以前は駅前にある「観光案内所」のようなところに飛び込み、現地の地図を入手して、それを頼りに目的地に向かいました。ただ地図といっても薄い紙です。もちろん防水加工はされていませんので、夏の暑い時などは1日たつとぼろぼろになってしまいます。お蔭さまで私の自宅には、東北地方の多くの市町村地図がボロボロの状態で蓄積されています。

 山歩きも同様です。私は一応、登山も趣味にしていますが、山歩きも当然、地図は必須です。ただ山の地図の場合は少し様子が違ってきます。山の地図は丈夫な紙でできているので、ぼろぼろになることはありません。

ここで左折
ここで左折

 ただ何時の頃からか、地図自体がソフトとして提供され、スマホに搭載されるようになりました。紙の地図より格段に便利です。ここでは便宜上、従来からの紙の地図を単に「地図」、ソフトを「MAP」と呼ばせてもらいます(英語を習いたてのお子様に笑われそうですが)。

  それまでは「地図」に拘っていたので、「MAP」など使うまい思っていましたが、使い始めるととにかく便利で、今では手放すことは出来なくなってしまいました。現在では全国どこでも「MAP」が提供されています。駅を出ると(もしくは最寄りのバス停を降りると)、まず目的地を入力して、そこで提供された経路に沿って歩くだけです。本当に便利な時代になりました。

 山の「地図」も同じです。山専用の地図アプリが提供されるようになりました。位置情報に加えて天気その他の情報も併せて提供されるので、山行きに地図を持参しなくてもいいという、以前には考えられない時代になりました。

ここで右折
ここで右折

 ただ時々、「MAP」は大変な遠回りをさせられたり、ほとんど民家の中としか思えないようなとんでもない経路を案内してくれたりします。予定より大幅に時間を要して、ようやく目的地に到着してみると、なんてことはない、そこは出発地点の近くであったりしたこともありました。このブログでご紹介したお勧めスポットでも同様の経験をしました。以前のように「地図」を頼りにしていれば、こんなことはなかったはずです。

 それでも「MAP」はそれを上回る便利さがあるため手放せなくなってしまいましたが、時々、思うことがあります。以前は「地図」を使って歩くことにより、その街の「俯瞰図」が頭に入るようになりましたが、「MAP」を使って案内通りに歩いても、視野がスマホに向くようになり、街のどのあたりを歩いているのかわからなくなっているのではないかということです。

さらに右折
さらに右折

 山も同様です。以前のように、山の「地図」とコンパスを頼りに自分の頭で考えて歩くことをしなくなってしまいました。ひょっとしたら地図を読む力がなくなってしまっているのではと不安に思うことがあります。また山でスマホのバッテリが切れたらどうしようということも考えたりします。

 とは言っても今ではこの偉大な文明のツールの便利さに侵されてしまい、手放せなくなってしまいました。

西山城跡にゴール!
西山城跡にゴール!

  ただ先日、目からウロコが落ちる思いをしました。福島県の小さな街を歩いていたのですが、その時の目的地がなんと最寄りの駅からほぼ100mおきに標識があり、全く「地図」も「MAP」も使うことなく目的地に到達出来たのです。もちろん分岐点となるところには必ず標識がありました。地元の方の配慮に感謝です。

 

「そうか!地図がいいのかMAPがいいのか考える以前に、目的地への案内板さえ整備されていれば、悩まなくても済むのか!」

 

 こんなこと言うと、地元の方に申し訳ないので控えますが、やはり最低限の案内板さえあれば「地図」も「MAP」もいらないはずです。

 とはいってもそんな我儘なことはいうつもりはありません。今では、「地図」を活用した俯瞰図の把握、そして「MAP」を活用した詳細の経路案内の両立てで旅を続けています。