仙山線各駅停車~仙山線に魅せられて 

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県境付近の面白山高原(ここも山形市内です)
県境付近の面白山高原(ここも山形市内です)

 仙山線は仙台駅と山形駅を結ぶ地方路線です。正確にいうと仙台駅と奥羽本線の羽前千歳駅間が仙山線とされていますが、山形県側のすべての列車は山形駅まで乗り入れているため、実質は仙台駅~山形駅を結ぶ路線となっています。沿線は歴史と自然に満ち溢れており、特に県境あたりは「本当にここが仙台市内(山形市内)?」と思うほどに山深いところを走行します。

 さてこの愛すべき仙山線は幾つかの特徴があります。

 

<特徴①>隣り合った県の県庁所在地だけを結んでいること

 仙山線は山形市と仙台市という県庁所在地同士を結ぶということだけではなく、県庁所在地しか走行しません。宮城県側は仙台市内のみ、そして山形県側も同じく県庁所在である山形市内のみを走るという全国的にも非常に珍しい路線なのです。

交流電化発祥の碑(作並駅にて)
交流電化発祥の碑(作並駅にて)

<特徴②>日本初の交流電化区間であること

 ご存知の通り交流による電化のメリットは、変圧器を用いることにより2万ボルトといった高圧の電流を変電所から離れた場所まで損失を少なく電力を送ることが可能であるということです。今では特に地方部において交流電化による鉄道が一般的となっていますが、この実用化を最初に試験走行したのが仙山線でした。なぜ仙山線が選ばれたのかについては幾つか理由があったようですが、それなりに負荷試験を行うために適した勾配があることなどのようです。最終的に試験区間は北仙台駅から作並駅まで行われました。作並駅構内には「交流電化発祥」の碑が建てられています。

県境付近の面白山高原
羽前千歳駅(右側が仙山線の狭軌線路、左側が山形新幹線の標準軌線路)

 <特徴③>新幹線と在来線の線路が並走すること

 羽前千歳駅~山形駅間は山形新幹線も通るために新幹線の線路規格である標準広軌となっていますが、仙山線も走行するため狭軌の線路も並走します。この区間は1999年の山形新幹線の新庄駅延伸に伴い、奥羽線が狭軌から新幹線仕様の標準軌になりましたが、一方、この区間は仙山線、左沢線も乗り入れることもあり、狭軌の列車が走行できるように狭軌の線路が残されたのです。羽前千歳駅では東から進入する(もしくは東へ向かう)仙山線が線路の東側、そして山形新幹線も走行する標準広軌の線路が西側を走行するという大変なユニークな構造になっています。

 さて仙山線は、開業以降、大きく発展をとげ、北山駅、国見駅、東照宮駅、葛岡駅、東北福祉大前といった新しい駅の開業が相次ぎました。このあたりは仙台のベッドタウンとして拓け、周辺の人口も増えたことにより、多くの駅は請願駅として実現されたようです。

仙山線E721系車両(国見駅にて)
仙山線E721系車両(国見駅にて)

  特に仙台駅~愛子駅間は仙台の近郊区間として通勤・通学の利用者が多く、概ね1時間あたり2~4本の列車が運行されています。一方、途中の愛子(あやし)駅を境として大きく様相が変わり、急に景色も山岳地帯へ移り変わり、平均乗車人員も極端に減るという閑散区間になります。

 どうも私はこの仙山線に魅せられてしまったようです。仙山線を何度も乗車してきましたが、そのたびに新しい発見の連続でした。ここでは仙山線の魅力をお伝えするために、実際に訪問してきた中からお勧めスポットをご紹介させて頂きたいと思います。もちろんご紹介するスポットはすべて駅からの徒歩圏内です。

 なお仙山線はかなりの部分を国道48号線(作並街道)と並行して走行しています。この作並街道は昔から愛子、作並、熊ヶ根といった宿場町として栄えてきました。この作並街道についても数回にわたり歩いてきました。このページでは主に仙山線沿線(今回は宮城県側)の少し有名なお勧めどころをご紹介させて頂き、昔ながらの宿場町については別途作並街道を歩くでご紹介させて頂きたいと思います。

 是非、皆さんも仙台もしくは山形に来られる機会があれば、自然と歴史に満ち溢れたこの素晴らしい仙山線に乗ってみませんか?またその足で作並街道を歩いてみませんか。

 


【東照宮駅】東照宮 

 徳川家康をまつる東照宮は江戸時代に徳川家との結びつきを強めようとして競うように勧請され、その数は500以上と言われています。東北地方でも弘前藩や会津藩でも造営されました。そして仙台藩でも伊達政宗が徳川家康との結びつきを強めるために1654年に造営されました。仙台藩あげての大事業だったようです。仙台の東照宮は、全国に造営された東照宮の中でもすぐれた建築様式と言われております。本殿、随身門、鳥居などが国の重要文化財、手水舎は県の指定有形文化財に指定されています。仙山線の東照宮駅から徒歩3分のところにあります。

東照宮
東照宮駅(2023年撮影)
東照宮
東照宮(2023年撮影)



北仙台駅(2023年撮影)
北仙台駅(2023年撮影)

 【北仙台駅】青葉神社

 伊達政宗を祀る神社として1874年に創建されました。当初は仙台城内にありましたが、1922年より社殿の改築が始まり、1927年(昭和2年)に現在の社殿が完成しました。近くには伊達家の菩提寺である東昌寺がありましたが、東昌寺の敷地の多くが青葉神社に提供されました。本殿内には伊達政宗の夫人の愛姫(めごひめ)を祀る愛姫神社があります。私が訪れた時は、参拝者は誰もいなかったため、静かな時間を過ごすことができました。

 なお毎年、仙台の初夏の行事として行われている仙台・青葉祭りは、伊達政宗の命日である5月24日に青葉神社で執り行われていた春の例大祭に由来したものと言われています。

 ちなみに余談になりますが、この青葉祭りのメインイベントである「すずめ踊り」は、私が2010年に仙台市内の定義如来を訪問した際にご一緒した地元の方にお勧め頂いたものです。祭りの期間中、仙台市のいたるところで繰り広げられます。飛び入り参加はできませんでしたが、是非、一見の価値はあると思います。

青葉神社
青葉神社(2023年撮影)
青葉祭り(すすめ踊り)
青葉祭り(すすめ踊り)(2019年撮影)


東北福祉大学駅
東北福祉大前駅(2023年撮影)

【東北福祉大前駅】大崎八幡宮

  東北福祉大学前駅はその名が示すように東北福祉大学の最寄り駅です。東北福祉大学が全額費用負担するということで請願駅として2007年に開業しました。周辺には見所が多いのですが、やはり国宝大崎八幡宮をはずすわけにはいかないと思います。その歴史は古く、なんと平安時代に坂上田村麻呂が宇佐八幡宮を現在の奥州市に勧請したことが始まりとされています。室町時代になり大崎氏が自領内に遷したため、大崎八幡宮と呼ばれるようになりました。その後、仙台藩祖伊達政宗の命により仙台の総鎮守として青葉城の北西方向である現在の場所に創建されました。権現作りの社殿は、現存する日本最古の桃山建築とされており、国宝建造物に指定されています。また社殿前の長床は重要文化財にも指定されています。

 1年を通していろいろな行事が執り行われていますが、特に秋の例大祭では無形民俗文化財の神楽や藩政時代から続くとされている流鏑馬などが周辺地域を含めて執り行われます。またパワースポットとしても知られており、私が2023年の4月に出向いた時も、最近不運続きのために訪れたという地元の方とご一緒させて頂きました。

 ちなみに仙台駅からバスで向かうと大崎八幡宮の正面に止まるのですが、私は東北福祉大前駅から徒歩で向かうアプローチが気にいっています。社殿の裏側から入ることになりますが、人通りも少なく静かな参拝を楽しむことができます。東北福祉大前駅から徒歩16分です。

大崎八幡宮(2023年春撮影)
大崎八幡宮(2023年春撮影)
大崎八幡宮(2023年秋の例大祭)
大崎八幡宮(2023年秋の例大祭)


国見駅(2023年撮影)
国見駅(2023年撮影)

【国見駅】三居沢発電所と電気百年館

 三居沢発電所は明治21年(1888年)東北で電気が初めて灯った場所、そして日本最古の水力発電の発祥の地と言われています。今もなお発電所としての機能を有しており、現在は東北電力が管理・運用しています。1999年には国の登録有形文化財に登録されました。

 そして1988年、東北で初めて電気が点灯してから100周年を記念して、発電所の隣に三居沢電気百年館が建てられました。建物自体は大きくはありませんが、電気事業の歴史や三居沢発電所の歩みなどを学ぶことができます。また隣接する発電所の様子を見学することができます。なおHP等によると予約が必要とありましたが、特に予約は不要でした。

 近くには「三居沢不動尊」や「三居沢交通公園」などもあり、家族連れでゆっくりと楽しむことができます。国見駅から徒歩18分です。

 余談になりますが、仙山線の国見駅から歩いていけるお勧めスポットとして三居沢電気百年館をご紹介しましたが、近くには仙台市営バス「るーぷる仙台」が停車しますので、あえて国見駅から歩くまでもないかもしれません。というのは国見駅から歩いて行くにはかなり急こう配の坂を下る(戻りの場合、急こう配の坂を登る)必要があります。坂の名前も「唸(うなり)坂」と呼ぶようです。私の拙い撮影技術ではその急こう配ぶりがうまく表すことができませんが、写真は唸り坂を上から撮影したものです。

 

三居沢発電所(左)と電気百年館(右)2024年撮影
三居沢発電所(左)と電気百年館(右)2024年撮影
唸坂(2024撮影)
唸坂(2024撮影)


愛子駅(2024年撮影)
愛子駅(2024年撮影)

【愛子駅】仙台市天文台

 「愛子」と書いて「あやし」と呼びます。よくクイズ番組などで珍名駅当て問題でも出てくる駅です。2001年に当時の皇太子徳仁親王の長女である愛子様が誕生した時には、全国的に有名な駅になり、入場券を買い求めるために行列が出来たようです。

 さてこの愛子駅周辺には旧作並街道の愛子宿等、見所が多いのですが、ここでは是非、仙台市天文台をお勧めしたいと思います。旧作並街道の愛子宿等については、作並街道を歩くでご紹介させて頂きたいと思います。

仙台市天文台(2024年撮影)
仙台市天文台(2024年撮影)

  仙台市天文台は愛子駅から徒歩20分のところにあります。これまでに2度の変遷を経て、2008年に現在の場所に設立されました。2023年にプラネタリウムのリニューアルが完成予定と聞き、それを待って訪れました。

 ここの天文台は小惑星の発見でも実績があるようで、1988年に発見された小惑星の名称は「愛子」と名付けられています。実は訪問するまではプラネタリウムがある子供向けの天文台と思っていましたが、プラネタリウムはもちろん展示室には、地球・太陽系・銀河系などに関わる展示や江戸時代に作られたという「渾天儀(こんてんぎ)」や「天球儀」「象限儀」などが展示されており、大人でも見応え十分でした。当初は1時間の滞在時間を予定していましたが、思わず2時間近くも見入ってしまいました。ちなみに「渾天儀(こんてんぎ)」や「天球儀」「象限儀」などは重要文化財に指定されています。 

 なお余談になりますが、2024年に久しぶりに愛子駅を訪れて大変に驚いたことがあります。愛子駅から天文台に向かう途中に巨大なショッピングモールとスパが出来ていたのです。また大変にモダンな住宅も数多く整備されていました。以前はこのあたりは何もない原野だったと覚えています。大変な変わりようでした。

愛子駅前の枝垂桜
愛子駅前の枝垂桜(2024年撮影)
愛子駅近くのショッピングモール
愛子駅近くのショッピングモール(2024年撮影)


作並駅(2024年撮影)
作並駅(2024年撮影)

【作並駅】鳳鳴四十八滝

 作並駅は仙台の奥座敷としても有名な作並温泉の最寄り駅になります。ただ温泉街は作並駅から3km離れたところにあるので、宿泊客の多くは旅館の送迎バスを使うようです。実際、私が訪れた時も作並駅は、数多くの送迎バス待ちの方が賑わっていました。

 さて作並周辺の見所として、作並温泉、旧作並宿、ニッカウヰスキーなどがありますが、ここでは鳳鳴四十八滝をお勧めしたいと思います。旧作並宿跡等については、作並街道を歩くでご紹介させて頂きたいと思います。

 鳳鳴四十八滝は、作並駅から徒歩25分のあたりの広瀬川の上流、国道48号線沿いにあります。滝は文字通り数多くあり、国道沿いの展望台から望むことができます。多くの滝がそれぞれの音を立ててそれらが周囲に響き渡るような大きな音になっているところからこの名が付けられたようです。実は現地に到着するまでは、滝を見るために下まで降りて滝を見上げるものと思っていましたが、下に降りることはできず、結構、高いところから見下ろして見学するようになっていました。

 ちなみに滝の数を数えてみましたが、どう数えても48に達しませんでした。まだ他に滝があるのを見落としていないか何回も確認しましたが、やはり足りないようです。戻ってきてから調べてみたところ、四十八滝という名前は江戸時代からの呼び名で、支流を含めると48あるということですが、どれがそれに該当するのかは定まっていないようでした。なお新緑や紅葉の季節がいいという書き込みがありましたが、雪の舞う中での滝も風流かなと思い、あえて厳冬の1月に出向きました。訪問当日、期待通り雪が降り、その中での撮影となりましたが、どうも私の撮影技術の未熟さのために、ほとんど雪の中の滝というわけにはいかなかったようでした。

作並温泉入口にある巨大なこけし
作並温泉入口にある巨大なこけし
鳳鳴四十八滝(2024年撮影)
鳳鳴四十八滝(2024年撮影)


<参考情報>