金勢祭りと花巻温泉郷【1987/4/29】
<カテゴリ:文化・遺産、祭り、温泉>
岩手県のほぼ中央部に位置する花巻市は、宮沢賢治生誕の地であり、宮沢賢治が理想としたイーハトーブの聖地でもあります。郊外には多くの温泉や、高村光太郎記念館や南部杜氏伝承館といった文化施設も多く、自然、文化に満ち溢れた見所満載の街です。また最近では、大谷翔平や菊池雄星といった日本が生んだ大リーグプレーヤが育った地としてもすっかり有名になってしまいました。また意外に知られていないのですが、実はわんこそば発祥の地でもあります。
そんな花巻温泉郷には金精様を祀る少し変わったお祭りがあると聞きました。金精とは、いわゆる男性のシンボルの形をしたご神体を祀った神の一柱で、縁結び、子宝、安産等のご利益があるとされています。また五穀豊穣や商売繁盛にもいいとされています。男性のシンボルを祀る神として、道祖神がありますが、私は正直、両者の違いを理解できていません。ただ日本の一部の地域では、金精神と道祖神が習合されているところもあるようです。ちなみに東北地方には金精様を祀っている温泉が多いようですが、規模が最も大きく、またお祭りと一体となって祀っているのは、ここ花巻温泉郷の大沢温泉のみのようです。
このような変わったお祭りがあると聞きつけ、早速、出向きました。
旅の起点は東北本線花巻駅です。東北新幹線にも新花巻という駅がありますが、東北本線の花巻駅から少し離れています。丁度、関東圏でいえば横浜駅と新横浜駅の関係でしょうか。また御多分に洩れず平成の市町村合併により、花巻市はそれまでの周辺の町と一緒になり、大変に大きな市になりました。
当日は例により急行八甲田号で出かけましたが、祭りの開始までに時間がありましたので、丁度、桜開花の時期ということもあり、北上駅近くの展勝地の桜を見たあと、高村光太郎記念館、花巻温泉郷巡りをしました。ちなみに花巻温泉郷は大きな温泉やひなびた温泉などいろいろな温泉があります。
特に祭りの会場となる大沢温泉は、非常に大きな露天風呂があることで有名です。また温泉郷最奥にある鉛温泉は、湯船の深さがなんと約1.25mと日本一深い湯のため、立ちながら入浴することで有名です。またここ鉛温泉は、昭和の小説家田宮虎彦の作品「銀心中(しろがねしんちゅう)」の舞台にもなりました。
これ以外にも、豊沢川沿いには一本の道路沿いに8つもの温泉があり、温泉好きの私にとっては、思わず全湯制覇を考えたくなります。是非、機会があればご紹介したいと思います。
さてお祭りで祀られるご神体は、大沢温泉から約2km離れた金勢神社で安置されています。ご神体は木製で出来ており、ここ大沢地区の住人の作と言われています。長さは約1.5m、重さはなんと150kgにもなる大きなものです。11月中旬に大沢地区の本宮から花巻温泉の大沢温泉内にある仮宮に移され、冬を過ごします。翌春のお祭り(4/29実施)にて、大沢温泉で洗い清められ、連休中に大沢地区の本宮へ戻されます。この本宮へ戻す際に大沢温泉で入浴の儀が行われ、それが金勢祭りとして知られるようになりました。
お祭りの当日は、金勢神社で神事を行った後、男性陣にかつがれ、ここ大沢温泉まで運びこまれます。その姿があまりにも生々しいので、若干の卑猥さを感じる方もいらっしゃる方もいるかもしれません。その後、大沢温泉の大露天風呂に入浴され、女性陣が金精様にまたがり、洗い清めます。金精様と混浴?されている女性の方を見ていると、こちらが顔を赤らめてしまうような気持ちになると同時に、先ほど感じた猥雑感を通り越して、東北地方独特のおおらかさを感じることができました。
金勢祭りを見終えた翌日は、花巻温泉郷巡りを楽しみました。
皆さんも東北の方のおおらかさを感じる少し変わったお祭りと、いろいろなバラエティのある花巻温泉巡りをしてみませんか。大変にありがたいことに、花巻駅からのバス路線は継続しているようですので、鉄道とバスと歩きだけで行くことが出来ます。
<関連情報>
①旅程※時刻は訪問当日の時刻表です。もし訪れられる場合は最新の時刻表をご参照頂きますようお願いします。
【1987/4/28】上野(21:18)=(急行八甲田)=北上(5:06)~展勝地桜祭り見学
【1987/4/29】北上(6:35)=(東北本線)=花巻(6:48)(7:00)=(バス)=花巻温泉(7:30)~花巻温泉、台温泉、釜淵の滝
花巻温泉(10:30)=(バス)=高村山荘(11:05)~高村記念館見学
高村山荘(11:40)=(バス)=花巻(12:20)(12:30)=大沢温泉(12:45)~金精祭り見学
②コロナ禍により2022年の金精祭りは中止になりました。早くコロナ禍が鎮まり2023年には実施されることを祈念します。
③是非、立ち寄りたい周辺のお勧めスポット(もちろん鉄道とバスと徒歩で)
身照寺(1990年撮影)
宮沢賢治の菩提樹。境内には大きなしだれ桜がある。見頃は4月中旬。JR花巻駅から徒歩23分
イーハトーブ舘(1996年撮影)
宮沢賢治に関する多くの図書や論文が公開されている。近くに宮沢賢治記念館もある。JR新花巻駅から徒歩25分
南部杜氏伝承館(1996年撮影)
南部杜氏(注)による酒造りの伝統文化を保存・伝承する施設(現在休館中とのこと)。JR石鳥谷駅から徒歩13分 注)日本酒を醸造する技術者集団の責任者
③大沢温泉(金精祭り会場)