作成:2025/4/5
クマ出没注意報発令中! NEW!
全国で熊の出没情報が相次いでいるようです。特に2023年頃よりその傾向が顕著になってきており、2024年の10月は2008年以降、出没情報が最多を更新したようです。
環境省の調査結果によると、東北6県だけで全体の6割を占めており、特に岩手県秋田県の2県だけで全体の4割を占めているとのことです。これはある意味、衝撃の数値でした。というのは、報道などを見る限り、てっきり熊というと北海道での出没情報(目撃情報)が多いものと思っていました。確かに東北地方に出向いた先々で「熊出没注意」の看板を目にすることが多くなったようには感じていますが、それでも岩手県と秋田県で全体の4割を占めるとは驚きです。またその目撃情報も市街地で発生しており、先日、仙台に出向いた時には、なんと仙台駅から徒歩7分程度のところで「熊出没注意」の看板を見かけました。
そして人への被害も多くなっており、2024年6月にはついに私が愛する八甲田山にて、山菜採りに訪れていたお年寄りが熊に襲われ死亡するという痛ましい事故が発生しました。このニュースは私にとって大変な衝撃でした。①元来、熊は臆病で人との接触を避ける傾向があり、さらに北海道に生息するヒグマと違い、本州で生息するツキノワグマは出会いがしらを除いて、基本、人を襲わないものと思ってきたこと、②そしてなにより以前は毎月のように出向いていた愛する八甲田山で死亡事故が起きたことです。
少し余談になりますが、死亡事故以降、しばらく八甲田山への登山規制があったようですが、実は人がこないことにより、一層、熊を始めたとした野生動物が下界に降りてくるのではと心配しますが大丈夫なのでしょうか?
一体何が起きているのでしょうか・・
なぜこれほどまでに熊が出没する頻度が増えてきたのでしょうか。よく言われる原因としては、異常気象などにより熊の大好物であるブナの実(どんぐり)が不作であることや、自然破壊による熊の生息地の減少、里山の荒廃などがあるようです。ただ死亡事故が発生してしまっている以上は、これまでにはなかったような生態系の変化が生じているとしか思えません。
ではどうすればいいのでしょうか・・
以前にクマとの共存を提言したSNSが炎上しているのを見たことがあります。すなわち地元の方から見れば「駆除一択」であり、共存などをいうのは都会に住む人のきれいごとに過ぎないというものです。確かにそうなのかもしれません。熊も住むところがどんどん狭くなってきており、餌が少ないために里山におりてきたり、痩せ細った熊の姿を見ると思わず「可哀想」などと思ってしまいますが、一時の感傷に過ぎないのかもしれません。
抜本的な対策は専門家に任せるとして、ここではかつて熊に遭遇した時のエピソードと、それを元に熊に遭遇しないための方法をご紹介したいと思います。そうなんです。実は私自身、クマに遭遇したことがあります。1985年ですから今から丁度40年前になります。場所は岩手県秋田県に拡がる八幡平で、その時は安比口という登山口から登りました。後から知ったことですが、この安比口は、結構、熊が出ることで知られているようです。ただ当時の私は熊に会うということなど全く考えたこともなく、無防備状態でした。
そして登山口から登山を始めて20分くらいのところで子熊に遭遇したのです。前述の通り、熊に遭遇することなど全く想定もしていなかったため、子熊にも関わらずしばらくその場から動くことができませんでした。これはまずいと思い、ゆっくりゆっくり後ずさりしました。熊もすぐに草むらに逃げていきました。私はそれ以上、登山を続けることが出来ず、ゆっくりと登山口に戻りました。もちろんその日の八幡平登山は断念です。
登山口に戻ると、丁度、これから登山する方とお会いしたので、熊情報を交換しました。その方が笑いながらおっしゃるには、熊の出没は想定の範囲内のようでした。特にこの安比口は熊が出没することで有名のようです。また私が熊に遭遇した時に、動くことができずゆっくりとそのままの格好で後ずさりしたとお話したところ、結果的に正解のようでした。熊は逃げるものを追いかける習性があるので、あわてて逃げ出すのは論外ですし、よく言われている「死んだフリ」をするのもよくないようです。実は私は昔から登山が好きでしたが、山岳倶楽部等に属したことはないので、この種の基本的な知識が全くありませんでした。もちろん写真を撮る余裕もありませんでした。
また今回は子熊であったからよかったとお話したところ、その方がおっしゃるには、実は結構、危険だったかもしれないとのことでした。すなわち子熊がいたということは、必ずその周りに母熊がいたはずということです。一層の恐怖を覚えました。
それ以来、改めて熊の習性などを覚えて実践するようにしました。そのためかどうかはわかりませんが、それ以来、40年間、一度もクマに遭遇したことはありません。もちろん森吉山、白神山など熊が出ると言われているそれなりに奥の深い山にも登ってきましたが、一度もクマに遭遇したことはありません。
ここではご参考までに、私が採ってきた方法をご紹介したいと思います。山の専門家から見ればこんなことは当たり前という内容ばかりだと思います。ただ私の場合、基本は単独行ですので、万が一のことを考えると慎重にならざるを得ません。もちろんこれにより熊に出会わないことを保証するものではありませんので念のため。
<出会いがしらに熊に会わないために>
・よく言われることですが、一番の基本は自分の存在を知らせることのようです。私の場合、危険そうな箇所(獣の匂いを感じた時や熊の糞を見た時等)を歩く場合、大音量の音楽を鳴らしながら歩きます。
・出会い頭を避けるために登山道以外(例えば山菜取りコース)には立ち入らないようにしています。
・稜線までの間の登り下り、特にブナの樹林帯を歩く時には最新の注意を払っています。
・熊の習性として、早朝や夕方、雨あがりに行動が活発になるようです。この時間帯の登山は避けるようにしています。そういえば安比で熊に遭遇した時も早朝、かつ前夜は大雨でした。
なお万が一に備えて熊除けスプレーを持つのがよいということを聞きましたが、専用のスプレーは万単位の出費となるので購入していません。
<もし出会ったとしたら>
・基本中の基本ですが絶対に走って逃げないようにしています。熊の習性として逃げるものを追いかけるようです。そもそも熊の走る速度にかなうわけはありません。熊の平均的な走る速度は50km/時間のようです。オリンピックに出場する選手の100mの記録を10秒とすると、時速に換算すると36km/時間となります。これではとても熊を振り切って走ることは出来なさそうです。
・万が一遭遇した時には決して餌を与えてそのスキに逃げることはしません。一度、その味を覚えてしまうと、いわゆる餌付け状態になり、熊は毎回そこに戻ってくる習性があるようです。自分のためというより後から来る人のためにも絶対に餌は与えないように心掛けています。もちろん食べ残しを登山道に放置するのは論外です。
マタギの教えではありませんが、「山を畏れ山を敬う」という謙虚な気持ちがきっと一番大事なんだろうなあと思うこの頃です。